うう……。


注意力散漫にもほどがあるよ。

何かに気を取られると、握力は普段の3分の1ぐらいになってしまう気がする。

まるで握る気のない手から、当たり前のように重力に従って、黒板消しはこれまで何度も落下していたのだ。


慌てて教室から飛び出した。

大急ぎで階段を駆け下り、中庭へと向かう。

なんだかイヤな予感がする……。

さっき……。

黒板消しを落とした時、怖くて確認できなかったけど、下から誰かの声が聞こえたような気がした。


まさか、黒板消しを誰かの頭の上に落としてしまったとか……?

まさか……ね。



黒板消しの落下地点は予想がついていた。


中庭にたどり着くと、その場所へ向かおうと足を進めた。

だけどその足はすぐに止まり、体は硬直することになった。






「ひょっとして………これ、落とした?」


黒板消しを手に、そう尋ねた人物……

それは、まぎれもない“コロちゃん”だった。