幸いなことに、幹部スペースには誰もいなかった。


誰も上がってくるなということなのか、見張りのように階段の上にテルさんが立っている以外は。



テルさんの視線は、こっちに注がれていた。



……あたしの顔はきっと赤い。


どうした?とでも言いたそうなその顔に、なるべく絡まれないようにと願いながら足を進めた。



「……ご心配とご迷惑をおかけしました」


無理に顔を引き締めたけど、見られないに越したことはないし。


それだけ言って、頭をさげながら階段を降りようとすると。


「入って行く時と随分顔が違うな」



……咄嗟に作った顔なんて、嘘だと見抜かれていた。