サトシから手渡された紙を開いてみる。

中にはいかにも女の子っぽい文字で名前とアドレスが書いてあった。


もちろん知らない子だ。



「あー……ごめん。これ返しといて。オレ、もらっても連絡取らへんと思うし……」


オレは紙切れをサトシに返した。


「そう言うと思った」


サトシは口の端を上げて、またポケットにしまった。


ヤツはうすうす感づいているのかもしれない。

まだ誰にも話したことのないオレの気持ちに……。


オレはみんなに気付かれないように、彼女の教室の窓をそっと見上げた。


ひょっとしたら、偶然にも覗いてくれるんじゃないか……なんて




――バカな期待を込めて。