僕は、沖田に背を向け部屋へと向かう。

「ありゃ?怒らせちゃった?」

笑いをふくんだ沖田の声は、僕には届かなかった。

スー

僕は、縁側に座る。

目の前には、もうすぐ満月の月と無数の星たち。

どうしても、満月が近くなると思い出してしまう。

「ブラッドムーン」

血の月

月が赤く染まることから、そう名付けられた。

ようは、月食の事。

でも、妖怪達にとっては月食なんて生易しい物じゃない。

だからこそ、起こったあの事件。

「ふぅ。」

考えを止めるようにため息をつく。

昔を悲しんだって意味は無い。

今は、未来(まえ)を見て歩かなくちゃ。

元に戻れるかなんて知らない。

なら、今を精一杯頑張らないと。

僕は、もう”イラナイ子”などにはなりたくないから。

遠くの方で、広間の煩い騒ぎ声が聞こえる。

かえって、その騒ぎ声が安心できる。

僕は一人じゃない………と。