あたしだって、凌牙のことを何も知ら……


「…うわあぁっ!」


突然人影が視界に入って、大きくのけ反った。



……キッチンに人がいた。


冷蔵庫の扉をあけっぱなしにして、ミネラルウォーターを飲んでいたのは。



凌牙……。



い、いたの!?


気配をなくしてるから全然気づかなかった。



初めて会った時と同じ、黒いスーツに身を包んでいる。


ゴクゴクと喉を激しく動かし、中身はものすごい速さでなくなっていく。


その妖艶な姿に目を奪われた。


口の端から零れる滴さえ、綺麗に思える。