思わず手で口もとを覆うと、氷野くんがふっと笑った。
また不意打ち……。
というか、氷野くんの笑った顔が拝めるのはいつも不意打ちだから困る。
「まあいいよ。 徐々にで」
「はい! がんばります!」
「がんばることじゃないけどね」
なんて言ったあと氷野くんは前を向いて、わたしもそれにならうとちょうどアパートが見えた。
もう着いた……。 帰り道、あっという間だったなあ。
もともと近いのもあるけど。
「じゃあね」
「あ、また明日ね!」
氷野くんとだったから、時間が経つのがはやく感じたんだろうなぁ。
そう考えると、うれしくて頬がゆるんだ。