「御園生、相変わらず名前覚えるの苦手?」
 御園生は苦笑した。是、と取れる愛想笑い。
「藤宮くーん? 姫さん一緒だと男が釣れて釣れて巡回になんないから返却願いたいんだけど?」
 御園生と一緒にいた女子が声をあげる。どこに向かって話してるのかと思ったけど、どうやら無線で通信しているようだった。御園生もそれを聞いているのか、瞬時に表情が変った。
「ツカサっ、縄はひどいっ」
 は……? 縄?
 不思議に思ったのは俺だけじゃなかったみたいで、
「それなんの会話?」
 隼人先輩が訊いたものの、答えを得ることはできなかった。
 一応相手はしてくれる。でも、男子が苦手なのがありありとうかがえる接し方だった。
 そんなところは中学のときと変らない。でも、何かが違う。
 御園生の目がきちんと人やものを視界に認めているように見えた。何も見ないように過ごしていた、あの頃の御園生とは違って見えた。