「ふーんって、俺の幼いながらに必死だった健気な恋心がカワイソウじゃねえ?」
「そうなの?そんなこと、忘れたよ。」
「忘れたわけがないだろ。忘れたのなら、なんで亜季に託したわけ?」
「似合うと思ったから。かわいいピンク色なんて、私に似合わないじゃない。亜季ちゃんのほうが似合う。」
「…俺はこれをお前に似合うって思ってあげた覚えはないね。」
俺の機嫌をうかがうように、俺の瞳をじっと見つめたあとで、ミチルはぷっと吹き出した。
「たしかにね~。そうだね、あのときハルくん、このピンクの横にあった緑色のシュシュ狙ってたわ」
「緑なんて綺麗な色じゃなかったよ。あれはコケ、コケ色だよ。」
「ひっど。」
そうは言うものの、ミチルの目は笑っている。
あの頃を思い浮かべるように、ミチルはそっと目を閉じた。