生徒に話していいことじゃない。明らかに愚痴で、一生徒に漏らしていい内容ではなかった。自分のプライドを傷つけられた、と言わんばかりの言い分。
 実際に御園生はこんなにも真っ青で、少し走っただけで蹲ってしまったというのに――なんでこの保健医はこんなにも淡々としているんだろうか。
 そこへ担任がやってきた。
「またですかぁ。こりゃぁ、あの両親がまたいらっしゃっちゃったりしますかねぇ?」
「だとしたら面倒ねぇ……。この年の子にはよくあることなのに」
「しかし、クラスの人間の話によると、急に走り出したってことなんですが……」
「困ったわねぇ……。走ったら貧血起すってわかってるのに自分から走るなんて……。かまってほしいのかしら?」
 保健医と担任の会話に唖然とする。自分の受け持つ生徒が倒れて、それが何度目だったとしても、「またですか」はないだろう。「かまってほしい」ってなんだよ……。中にはそういう人間もいるのかもしれない。でも、御園生に限ってそういうことはない。