入園して直ぐ、その希望は打ち砕かれた。

他の子供より発達が遅い私はカ行が言えなかった。
名前を聞かれても彩夏、なんて答えられずいつも「あやた」と答えていた。
馬鹿な子なんだ、と周りに笑われた。
馬鹿という言葉の意味がわからず私はただ笑っていた。

私には、友達がいなかった。


工作の時間はハサミで髪を切られた。
休み時間にはおもちゃのブロックの家に閉じ込められた。
出られないようにバリケードを張られた。
皆の脱いだ制服を汚さない用のエプロンを畳むのはいつも私の役目だった。
辛いも苦しいも、なんの感情もわからない馬鹿で無知な私はこれが「普通」なんだと感じた。

暴力なんて当たり前。
意見なんてなに一つ言えず。
泣くことすらも出来なくて、泣く悪い子だなんてお母さんに思われたくなくて。
私は只管笑っていた。