その無意味な性教育の餌食に彼女がなったとき、俺は爆発した。
 回収されたはずのコンドームが、集会が終わって体育館から教室戻ってくると彼女の机に置かれていた。すぐに察しはついた。クラスの男子のいたずらだ、と――。
 彼女は出席番号順に並ぶと、列の最後尾に並ぶことになる。コンドームは前から順に物渡しレースのように流れていき、終着点の彼女はそれをほかの誰に回すこともできず、先生が回収するまで持っていることになった。
 ただそれだけだったんだ。なのに、彼女がコンドームを持っているだけで「汚いもの」扱いをされ始めた。その矢先、教室の机にコンドームが置かれているとなると、さすがの彼女も耐え切れなかったんだろう。運動ができないという噂があり、体育の時間は常にレポートをしている彼女が教室を飛び出した。全速力で廊下を駆けて行く。
「なんだ、走れるんじゃん」 なんて言葉をキャッチしつつ、俺は後先考えずにあとを追った。
 性質の悪い噂やいじめ。それらに淡々と対応していた彼女だけど、それらとは比にならなかったのだろう。一目で彼女が傷ついたのか見て取れた。だから、ひたすらに追いかけた。