俺の卒業した幸倉第一中学は、小学校ふたつをひとつにまとめた学校で、入学したての頃は知っている顔が半数もいなかった。
 彼女は「知らない顔」に含まれた。つまり、俺とは違う小学校の出身。
 そんな彼女を俺がどうやって知ったかというのなら、ひとえに噂で、だ。
 入学当初は誰が格好いいだの誰がかわいいだの、とその手の噂で大盛り上がり。その中でも彼女の噂は群を抜いていた。とにかくかわいいということで。
 顔見たさに彼女のクラスを訪れる人間があとを絶たなかったという。
 俺は噂に乗じて彼女を見に行くことはなかったけど、廊下で初めて見かけたときには思わず赤面してしまった。それくらいにかわいかったんだ。
 だが、クラスが違えば話すこともない。こっちが彼女を知っていても、彼女が俺を知ることは皆無。
 そんな状態で俺と彼女は出逢うことになる。とても申し訳ない形で。