まさに狙ったものは逃がさない、といった根っからの肉食系だという。
そして前々から彼を落とそうとしているが苦戦している、ということをトイレで話しているところを聞いてしまったことがある。
……なるほど、彼女はまだ彼を落とせていないのか。
「災難だったね。……それとね、」
「はい?」
「その子は多分、島田さんじゃなくて島崎さん。」
彼が元々大きな瞳を、更に見開く。そして、おかしそうに笑った。
「やばい、俺めちゃくちゃ失礼だ。」
その言葉とは逆にクスクスと笑う彼に、思わずこちらも笑ってしまった。
……本当にそうだ、仮にも自分を好いてくれている女の子の名前を忘れるなんて。
しばらく鏡を見ながらティッシュでシャツを摘まんでいた彼だが、一向に取れないことに折れたらしい。
ありがとうございました、と鏡を私に返す。
「こういうのって、普通の洗剤でいけますかね?」
その質問に、うーん、と首をひねる。