食器棚は空っぽで、キッチンの中にもなにも置いていない。


壁にかざってあった家族の写真も、わたしが小さい頃に描いたなつかしい絵もぜんぶはずした。



そう、今日は引っ越しの日だ。



「みんなそろったことだし、お昼ごはんにしましょうか! 百華、手洗ってらっしゃい」


「はーい!」



わたしは2階の自室にリュックを置いて、手洗いうがいを済ませるとリビングへと戻った。



殺風景なリビング。 きれいに片づいている床。


この光景を見ると、ああ引っ越すんだなあって、さみしくなる。


引っ越しは慣れたけど、このさみしさには慣れないなあ。