――ドンッ!

鈍い衝撃にオレの足は止まった。


一瞬、何が起こったのかわからなかった。

気がつくと目の前に女の子が立っていた。


彼女とぶつかったんだということに気づくまで数秒を要した。

足元には、ノートのような物が落ちていた。

口をパクパクさせて何か言っている。

この状況だし、多分謝ってるんだろう。


オレは慌ててヘッドフォンをはずしながら謝った。


「いや……ごめん。ちょっと、ぼー…としてて……」


しゃがみこんで足元にあるものを拾う。

それは小さなスケッチブックだった。


「ほんま、ごめんなぁ……」


「いえっ。あ……すみませんっ……あの……すみません……」


スケッチブックを手渡すオレに、彼女は何度もペコペコと頭を下げていた。


この子、謝ってばっかりやな。

吹き出しそうになって、慌ててヘッドフォンを耳にあてると、その場を去った。


顔はよく見てないけど。

おどおどしてて、なんか、小動物みたいな子だったな。



なぜかじわじわと口元がほころび、笑いがこみ上げてきた。

多分それは、朝からずっと不機嫌だったオレが、今日初めてこぼした笑みだった。