車の外に出ると、刺すような冷たさが全身に広がる。

瀬戸さんは、泣いているとすぐに分かった。



「俊介が、小嶋 彩美と抱き合ってたからだよ。失恋しちゃったからだよ…」


「メディアはゴシップネタが大好物みたいですね。僕と彩美は確かにお付き合いしていましたが、もう8年も前の話です。よき理解者でもあり、ライバルでもあります。まあ…今はもうライバルだなんて言えませんが…」


彩美の方が何もかも上だ。悔しいけれど…


「でも、また付き合うんでしょ?」


彩美が車に寄りかかって、僕を見て笑っている。話を聞かれていたかもしれない。
そう思ったら、すぐに言葉が出てこなかった。


「それは…」


「もう、切るね…。夜遅くにごめんなさい。さようなら…」


瀬戸さんはそのまま電話を切ってしまった。

僕は暫く携帯を眺めたまま。胸の奥に、嫌なモヤモヤしたものが残って。


「彼女?」


彩美が面白そうに頬を緩ませて、サイドミラーに肘を乗せた。



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