なんとか1日仕事を終えて、外に出ると。
深い灰色の空から雪が落ちてきた。
「あーぁ…傘忘れた…」
天気予報だけでも見ておけば良かったと思うけれど、降り始めたばかりだしと気にせず歩きだす。
冷たい空気を胸いっぱいに吸い込めば、ズキズキ痛む心を麻痺させてくれる気がして。
静かに降り続ける雪の中、空を仰ぎながら深く呼吸をした。
このまま、私も雪に埋もれて隠れてしまいたい…
真っ白な、雪で。
全部、全部、埋めつくして。
「…俊介、あい、たい…」
会いたいよ。すごく、すごく。
吐き出す白い息と一緒に、嗚咽がもれる。
「あたし…」
大事な事を、忘れていた。
はっと顔を上げて、ぱらぱらと散る涙が雪と混ざる。
私は、大事な事を忘れていたのだ。
.