ケータイ小説 野いちご

カクテルに恋の魔法を。


 「これ、美味しいわね」

 律を見上げると、律はうれしそうに笑った。

 「ちゃんと果汁を絞って、作っていますからね。ウオッカをベースに作っていますが、今日はわざと、アルコール濃度は低く作っています。あと、量も少なめに。今入れたグラスは歌子さん用に、僕が用意しました」

 え?

 「これは口当たりがいいので、つい飲みすぎてしまうカクテルの一つですからね。他で頼むときや、男性におススメされる時には、ご注意ください」

 フッと、律はみなまで言葉にせずに、笑う。

 な、なによ。酔いつぶれるとか、もうあんな失敗なんてしないわよ。

 私はムッとしながら、カクテルを飲んだ。バカにしてるの? それともカラかいたいわけ? どちらも感じが悪いと、私は思った。

 だけどフッと、私は思う。

 私は自分勝手に視野が狭くなり、律のことを、悪く見過ぎてはいないだろうか。

 なんとなく私はそう思え、律は、私を心配して、これを教えてくれているのかもしれないと、思えてきた。

 私を振り回してばかりの律だけど、でも。

 何でも悪いように、考えすぎるのもよくないわよね?

 根は、親切でいい子なのかもしれないし、あんまり人を悪い言いすぎるのもダメな気がする。

 だから。こういうのは、よくない。反省しなきゃ。

 「……ありがとう」 私は小さくお礼を言う。

 シンッと沈黙が走り、え? と、不思議に感じた私は顔を上げた。

 律は目をぱちくりとさせている。

 なによ、その顔。お礼を言って損した気分にさせないでよ。

 「あのね、律。私だって教えてもらったら、お礼くらい言うのよ。何か文句でもあるの?」

 私はムッとして、律に問いかける。

 律は溜息をついて、首を振った。

 「いいえ、別に。そういう素直すぎるところ、どうかと思いますけど、それが歌子さんですもんね」

 意味が分からないし、いちいちムカつくわね……。

 「で?」

 はぃ?

 律は私を見つめながら、続ける。

 「僕から聞くのもなんですが、歌子さんは僕に聞きたいことは思い浮かびましたか?」

 「え? 何が??」

 「何がって……」

 私がキョトンとすると、律は意表を突かれたよな顔をする。

 なによ、その反応。聞きたいことって、何?

 聞きたいことって―――……。

 あ、そっか! 溝内さんのことだ!!!

 律が言いたいのは、溝内さんのことだと気が付いた私は、しまった! と、何故か慌ててしまった。

 そうだ。そうだった。私と律は、そんな話をしていたのだと、私は思い出した。

 なんか、嫌だわ。別に私は、溝内さんの存在を、忘れていたとか、そういうんじゃないとは、思うけど……。

 でも、昨日の律の言動のせいで、私は溝内さんを想い、考えている余裕がなかったっていうか、なんていうか。

 変よね。モヤモヤするわ。だって、溝内さんのことを考えない日なんて、なかったのに。

 どうして、律のことなんか………。

 「歌子さん?」

 え? あ、

 「うん、溝内さんのことね!」

 私はパッと顔を上げて律を見ると、忘れてなんかいなかったアピールをする。

 「………はい」と、律はワンテンポおいてから、うなずいた。

 へ、変な間をあけないでよ、もう!!

 えっと……。そうよ。

 溝内さん情報に釣られて、私はここに来ることを決めたんだし、うん。聞かなきゃ損よね?

 そうよ。何か一つくらい、質問をしておかないと! と、私は自己納得の頷きをへて、口を開いた。

 「―――っじゃぁ、聞くけど。私に、その……。望みはあると思う?」

 「え?」

 律が言葉に詰まり、一瞬の間。

 私の心臓がドキリと跳ねて、それと同じくらいのタイミングで、律は続けた。

 「それは……まぁ、そうですね。溝内さんは、歌子さんみたいな人を、求めているんだと思います」

 「―――え?」


< 51/ 104 >