「くっそ~、俺も髪の毛くしゃってやりてぇ……」
「おうおう。司に睨まれてもいいんだったらがんばれよっ!」
「それは多大な勇気が必要……」
 そんな会話を頭の上でされていると、
「真咲、邪魔」
 後ろから桃華さんの声が割り込んだ。
「なんで真咲が同じクラスなのよ……」
「姐さん、ひでぇ……」
「真咲さえいなければ私が翠葉の後ろの席だったのに」
 桃華さんは山下くんを立たせその席に収まると、我関せず、私の髪の毛を指に巻きつけて遊び始めた。
「何、簾条、姐さんって呼ばれてんの?」
「はよっす」と新たに加わったのは佐野くん。
「別に呼ばせてるわけじゃないわよ? 勝手にそう呼ぶ人間がいるだけ」
 桃華さんはつまらなそうに言う。でも、佐野くんは「似合いすぎて腹痛ぇ」とお腹を抱えて笑いだした。
 そんなことをしていれば担任の先生が入ってくる。
「まずは始業式だ。みんな桜林館へ移動!」
 そう言ったのは一年のときと同じ担任、川岸先生だった。