「ミサキ」






背後から名前を呼ばれて、あたしはぴたりと立ち止まり、後ろを振り返る。






「たっちゃん」





「おはようさん」






たっちゃんがにっこりと笑って片手を挙げた。






「ミサキも部室行くんやろ? 一緒行こ」





「あ、うん」






たっちゃんはあたしの隣に並んで、ゆっくりと歩き出した。







「……………」





「……………」





「……………」





「………なんで無言やねん」






沈黙に耐えきれず、あたしは声をあげる。




たっちゃんはちらりと見下ろして、「べつにええやん」と眉を上げた。






「いや、ええけどさ。


いっつもぺちゃくちゃ喋りよんのに、いきなり静かんなると、調子狂うやんけ」






「ぺちゃくちゃて、失礼やなぁ」






たっちゃんは明るい笑いを洩らした。