「そんなことあるわけないじゃん! だって、女の子同士なんだよ? そんなこと……そんなの、気持ち悪い!」


 気持ち悪い。

 と、金切り声で吐き捨てた自分の言葉が深く胸に刺さった。

 自分で自分の心臓を貫くその痛みに、涙が溢れて頬を伝う。


「篠塚。お願いだから、そんなこと言うなよ……」


 悲痛な声が、胸の傷にしみた。


「気持ち悪いだなんて、そんな」


 泣きながら、私は目を丸くする。

 どうして、稲葉まで泣きそうな顔をしているんだろう。

 稲葉がまた私の腕をつかんだ。

 弱々しくて頼りない、すがりつくように震えた手だった。


「お願いだから、言ってくれよ……三笠のことが好きだって」


 うなだれる稲葉の後頭部を見下ろしながら、私は唐突に覚っていた。

 どうして稲葉がこんなにも私を問い詰めるかという、その理由を。

 ああ、そうだ。


「……青山、透……」


 私の唇から零れ落ちた、その名前。

 私がその名前を口にすると、稲葉は飛び退き、憐れなほど青褪めていった。

 私の稲葉に対する恐怖心は消え去り、その代りに込み上げてきたのは喜びだった。

 同じ、なんだ。


 私は三笠舞に、稲葉は青山透に恋をしている。