ケータイ小説 野いちご

カクテルに恋の魔法を。


 「そんなわけないでしょ!!」

 私はその場に座り込んだまま、声大きく否定した。

 律はそんな私に、ニッコリと笑顔で、首を振った。

 「自覚が無いのなら、ちゃんと自覚したほうがいいですよ。あまり男を誘惑しないことです。勉強になってよかったですね」

 「ゆ、誘惑って、私は別に!!」

 「僕が思うに、照れ隠しする歌子さんは、それが隠しきれていなくて、とても可愛いんですよ」

 「――――っか!?」

 可愛い!? また、そんなことを言うの!?

 言葉も続かない私は、口をパクパクさせる。

 もう、こういう言葉の連続攻撃は、やめてもらえないかと、心底思えた。

 困ってしまって、どうしようもない。

 なのに、律は私の心中知ってか知らずか、サラリと甘い言葉を続ける。

 「それにね、僕の言葉にいちいち反応している歌子さんが、たまらなく可愛いんですよ。その瞬間、あなたは僕のものだと、独り占めしているみたいで、うれしくなる」

 効果音にするなら、ボンッと、私の顔に熱がこもりすぎて、そんな音がなるんじゃないかと思えた。

 あぁ、もう、無理。もう、耐えられない。

 私は必死に声を絞り出し、なんとか言葉を返す。

 「そ、そういうの、いいから。や、やめよう! お願いだから、もうやめて!!」

 つい、お願いしてしまうほどの必死の言葉に、律はキョトンとする。

 そしてその場にしゃがみ込み、私と目線の高さを合わせると笑った。

 「やめるもなにも、ただの会話ですよ?」

 よく言うわよ! ってか、近いし!!

 私は身を引いて、「ただの会話じゃないわよ!」と、反論する。

 律は私の反論に笑って続けた。

 「そりゃまぁ……。好きな相手が目の前にいるのに、口説かない男なんて、いないですよね。僕としては、遠慮なくいかせてもらってます。あぁ、でも。遠慮は少々、してるのかな」

 「はぃ?」

 「だって、キスしてもよかたんですけど、しなかったでしょう?」

 ―――っあぁ、もう! この男は、またそんなことを簡単に言う!!

 私の顔は、きっと真っ赤なのだと思う。

 自分でそれが想像できるなんて、嫌すぎる。

 「わ、私! もう帰る!!」

 「え?」

  私はその場を立つと、なんとか律に背を向けて、彼から逃げ切った。

 律は私を追いかけない。

 私の背からは律の笑い声と、「また明日の夜に、バーでお待ちしています」そんな言葉だった。

 それに、私は返事をしない。

 でも、行かないわけにはいかない。

 約束したし、溝内さんによけいなことを言われるとか、ありえないし。

 ググッと唇に力が入り、困り顔になる。

 心臓が、私のものじゃないくらいに、ドキドキしていた。

 こんなの、初めて。どうしたっていうのよ。

 私の好きな人は溝内さんなのに、これじゃまるで律にその想いを、奪われたみたい……。


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