我ながら情けないけど、下り坂の半分くらいに来たところで、限界に近づいたことを主張するように、脇腹がきりきりと痛んできた。





あたしはぜぇぜぇと息を切らしながら、たっちゃんの背中に向かって叫ぶ。






「あー、もー、えらいっ、しんどっ!!


こない全力疾走したん、何年ぶりやろ!」





「あははっ、俺もや!!」






たっちゃんが少し振り向いて、そう叫び返してきた。






「こぉゆうときはほんっま、下宿生がうらやましぃわ!!」






「終電に追われんのは、自宅生の特権やで!!」






「特権もなにもあるかい!!」






「十年経ったら、ええ思い出やって!!」






「どんな思い出やねん!!」






「俺と愛の逃避行したっちゅう、甘ぁい思い出!!」






「いらんわっ!! ちゅうかしゃべるとしんどさ倍増や!! 話しかけんといて!!」






「ミサキから声かけてきてんやん!!」






「あんたに話しかけたあたしが間違うとったわ!!」






夜道でぎゃあぎゃあと叫び合うあたしたちを、月が穏やかに見下ろしている。





ポケットの中のミルキーが、走るあたしの動きに合わせて、かさかさと音を立てていた。