「え?なんで?」


そうとは知らず、きょとんとした顔の平助。


「や、山南さんが照れちまって、くつろげねえだろ」


「ああ、そうか。そうだね。

それにしても伊東さん、うまいことやってくれたなあ。

山南さん、日に日に明るくなっていくみたいだもんね。

どんな相娼(あいかた)さんか、俺も会ってみたいな」


「だから、ダメだって!!」


「なんだよ総司、そんなに怒らなくたっていいだろ。

山南さんの逢瀬の邪魔をする気なんか、全然ないよ」


わけもわからず怒鳴られた平助は、腑に落ちない顔をしていた。


俺は逃げるように、副長室へと急ぐ。


早く、楓の言っていたことを報告しなければ。


「土方さん、失礼します!」


あの明里という女、山南さんの怪我を治す薬を入手する手段を知っているという。


それはもちろん最重要事項だけど、俺や楓が気になったのは、明里の出した条件だ。


山南さんを新撰組から脱退させて、どうしようというのか。


腕が治れば、山南さんは手練れの剣客。


頭も良く、人柄もいい。


もしかしたら、敵側の人間が山南さんをほしがっているのかもしれない。


そして明里は、そういった人間と繋がっている可能性がある……。