「私、納得いかないよ」

「美佳、落ち着けって」


隼人は美佳の腕を掴む。

美佳は、俺に泣いて訴えた。


「隼人だってお兄さんを亡くして寂しいのは同じじゃない。なのに何で夕斗なの?」


美佳は少し、理性をなくしかけていた。


「夕斗は優しすぎる」

「いや、これは優しさとじゃなくて」

「でも、今夕斗がやっていることは、同情だよ?」


美佳の言葉に少し詰まった。

確かに周りからみたらそうかもしれない。

でも、同情じゃないことは確かなんだ。


「もし……もし、それがウソだったらどうするの?」


美佳が恐ろしい事を口にした。


「え?」

「その話がウソで、ただ夕斗に近づきたくてついたウソだとしたら?」

「美佳、言いすぎだぞ」


隼人が少し低い声で言った。


ウソ……?


俺に、一気に不安が襲いかかる。


「藤沢は……あいつはそんな奴じゃない」

「わかんないじゃん!お願い夕斗、目を覚まして?」

「俺は……」


俺の言葉はだんだん自信がない言葉になる。

藤沢はそんな奴じゃないはず。

でも……万が一、美佳が言ってる事が本当なら?

わからない。今まで考えた事ないから。



「ごめん……俺……」

「夕斗!」


俺は何が何だかわからなくて、少し考えたくて、この場に居ても立ってもいられなくて。

家を飛びだした。