「失礼しまーす」

 保健室の扉を開けると、舞がベッドに腰掛けて靴下を履いていた。

 膝を抱えるように靴下を履いている舞のプリーツスカートはめくれ上がって、白い太ももがむき出しになってしまっている。

 それを見てしまった私は息が止まりそうになり、それでもなんとか声を絞り出す。


「舞、見えちゃうよ」


 後手に扉を閉めて、眉間にシワを寄せる。


「ごめんごめん。見苦しいものをお見せしました」


 足を下ろしてスカートを直し、冗談を言ってるみたいに無邪気に笑う。


「でも、愛ちゃんでよかった。一瞬、男子が入ってきたのかもって焦っちゃった」


 チクリと胸が痛んだ。

 男子なんかより、私の方がたちが悪いかもしれない。


「篠塚さん、鞄を持ってきてくれたのね」


 保健の先生が部屋の奥から顔を出し、私のことを見てにっこりと笑った。


「私が代わりに取りに行こうかと思ってたところだったの。助かったわ。ついでに、三笠さんを家まで送ってあげてくれないかしら?」

「はい、もちろんそのつもりです」

「そう。よかったわね、三笠さん」

「はい! じゃあ帰ろうか、愛ちゃん」


 舞が立ち上がり、私の腕を引いた。


「舞、大丈夫?」


 ふらつく足取りで昇降口に向かう舞を気にしながら、その隣を歩く。


「だいじょーぶだって!」


 あまり大丈夫そうじゃない赤い頬で笑い、すぐに下駄箱まで到着した。

 靴を出して地面に放り投げると、大きな音を立てて転がる。

 舞は裏返ったのを足先で直しながら履く。

 また倒れるんじゃないかって目が離せずに、私は半ば手探りに靴を出して履いた。