ケータイ小説 野いちご

カクテルに恋の魔法を。



 「そ、それって、どうなの?」

 私はなんとか声に出し、言葉にする。

 すると律は、悪びれることもなく、サラリと続けた。

 「だって、シワだらけの服で帰るなんて、飲み会の帰りです。オールしましたって言ってるみたいで、恥ずかしくないですか? 朝帰り感だすのも、みっともないですよ」

 み、みっともない!? そ、それを言う??

 私はもっともらしい律の言葉にグッと、口をつぐむ。

 悔しそうに律を見る私に、彼は満足そうに笑った。

 そして腕を組み、ドアにもたれると、ジッと私を見て、まるでその瞬間を思い出しているかのように、律は続ける。

 「だから僕はね、あなたのブラウスのボタンを、一つずつ外して、スカートのフォックを外して、ファスナーを下して…」

 ちょ……

  律は口元に、考えるように軽く握った右手を添えながら、口角を上げる。

 「……そして、寝苦しそうだったので、ストッキングも脱がせました。でも、下着までは脱がせてはいません。あぁ、でも。わざと触っていない保証は、しませんけどね」

 律は両手の平をパッと、私に見せて笑った。

 「――――っ!?」

 言葉も出ない。カァッと、私の顔に熱がこもった。

 な、なによそれ。

 そ、そ、それは、なに?

 つまりは、故意的にどこかに触れた可能性が、あるってこと?

 それは、どこよ!!

 グッと、掛け布団をまた自分に寄せるようにすると、私は混乱しながら口を開いた。

 「り、律。あ、ああ、あなた、今けっこう、問題発言してるわよ!」

 「そうですか? 僕、歌子さんを襲ってはいないですよ?」

 お、襲うだなんて……。そんな犯罪おかされたら困るわよ!

 私は普段聞きなれない単語に、耳まで赤くなっているんじゃないかと思えるくらい、恥ずかしくなった。

 なによこれ、なんなのよこれ。ちょっと、待ってよ!!

 グググッと、布団を握る私の手に、力が込められる。

 律は隠していた色気をまとう様に、艶やかな雰囲気をかもし出し、私はその雰囲気に飲み込まれるようで、どうしたらいいのか分からなくなった。

 や、やだ。やめてよ。ズルいわ。

 その豹変ぶりは、犯罪レベルよ。

 私に、どうしろって言うのよ!!

 混乱する私に、律は楽しそうに近づくと、声色低く、口を開いた。

 「まぁ、ね……」

 ゆったりと、律がベットに手を乗せて、体重をかける。

 少し沈むベットと近づく距離に、私は身を縮めた。

 「―――――っ!」と、言葉が出ない私に代わり、律は顔色変えずに笑う。

 「襲ってほしけりゃ喜んで、このまま押し倒しますよ。今なら洋服を脱がす手間もありませんしね」

 耳に響く、律の声が甘い。

 ど、どっから出してるのよそれ!!

 これって、どういう状況なの?

 私、遊ばれてる??

 「――――っ!!」

 あぁ、もう!!

 私は目が回りそうになりながら、なんとかしなきゃと、律を片手でグッと押した。

 落ち着きなさい。振り回されてちゃダメ!!

 私はそう、何度も自分に言ってやると、律を睨みながら口を開く。

 「からかうのは、やめてくれない? こう見えても私は、一応は女なの。そういうネタで、遊ばれたくない」

 「僕はからかってないし、遊んでもいません。歌子さんが女なことを知っているし、逆に僕は、歌子さんに僕が男であることを知ってほしいくらいなんですけど、理解しました?」

 律は呆れたように溜息を吐くと、私から離れる。

 「僕、昨日言いませんでしたっけ? 歌子さんは女で、僕は男であることを。警戒しなくていいのかと、問いましたよね? なのに歌子さんときたら性別無視して、自分を女でなく男のように思っているんだから、どうかと思いますよ。飲みすぎないように、忠告もしましたよね?」

 な、なによ、その目。その怒った顔、やめてよ。

 じゃ、なに? 今のは私が、律を男扱いしなかったから、怒ってやったこと??

 私、律のプライドを傷つけたの??

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