「今年の夏祭りは、今までで1番楽しかったぁ。
終わっちゃうの、なんかさみしいね」

「そうだなー」



互いに花火が途切れないように、繰り返し近づいては離れる。



「来年は藤原くんたちと来るでしょー?
あ、でも水谷くん受験生だ!」



じゃあ来年は来ないのかな。

なんて零す夏目を見て、ちくりと刺すような痛みを感じる。



「……来ようよ、来年もふたりで。
今度はちゃんと待ち合わせしてさ」



だって、嫌だと思ったんだ。

夏目以外の奴と来るのも、夏目が他の奴……もしかしたら男子と来るかもしれないことも。



そんなの耐えられない。

今日がすごく楽しくて、愛しいと自然に思える時間を過ごしていたから。



「水谷くん……」



夏目はそっとしゃがみこんで、頬に手を当てた。

そして口元をきゅうっと押さえて、じわり。

胸にしみるようなあったかい声。



「嬉しい。すごく、……すごく」



その姿はまるで1枚の絵のように綺麗で、俺はただ見惚れた。