はっ、と息を吐く。

荒い呼吸のまま隣の夏目に視線をやると、ふぅと大きくため息を吐いた。



こんな走りにくい浴衣でよくまけたよな……。

ドジな夏目が珍しく転けなかったから、かな。



「なぁ、夏目。なんで走ったんだ?
岩倉はいいのか」

「だって……」

「んー?」

「だって、わたし、まだ水谷くんと一緒にいたかったんだもん」



胸の奥がいつもはしない音を立てた。



なん、だよ。これ。

顔、すごい、あつい。



夏目があごを引いてしまえば、もう俺に表情は見えない。

彼女の声が震えているのは羞恥心?

それとも……。



「夏目」

「なぁに」

「……」



なにを言おうとしたのか、自分でもわからない。

夏目もどうしたの? と言いたげに首をこてん、と傾げている。



本当わからない。

けど、とりあえず、



「……花火、しない?」



手に持っていた景品と一緒に見せてやると、夏目は顔を上げ、潤んだ瞳を丸くして。

そして「うんっ」と頷いた。