冬の間だけ食べられるお汁粉は、マスターが超手間暇かけている逸品だ。

 なぜ、喫茶店でお汁粉を出しているのかなんて追及してはいけない。この店ではマスターの気分でメニューが決まるのだから。

「じゃあ、お汁粉二つ!」

 坂本さんに注文すると、明らかにほっとしたような顔になる。

 お汁粉を頼むと、日本茶がサービスでついてくるから、飲み物は頼まなかった。

「……これからどうする?」

 こちらに身体を寄せてきた彩佳がひそひそとたずねる。私は鞄からスマホを取り出した。
 
 やっぱり、比奈子について新しい情報は入ってきていないみたい。ため息とともに鞄に戻すと、厨房の奥からマスターが心配そうな顔をのぞかせた。
 
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