佐伯センパイのことでけじめをつけるために切ったという髪。


 その亜希の短くなった髪は、今は少しのびたみたいだ。


 首元にかかる襟足の部分がはねているのが、なんだかかわいいなと思う。


 まあ、亜希はどんな髪型でも似合うし、何をしても可愛いんだけどさ。


 亜希の髪は夕日を浴びて茶色く光っている。


 あの頃より格段にキレイになった亜希に、思わず見入った。


 こんなに近くで顔を見ることなんてなかなかないから、これでもかというくらいにじっと見つめた。


 ああ、困ってる困ってる。


 眉を垂らして、小首をかしげるこの姿。


 佐伯センパイが見たら悶えるだろうな。


 つーか、こんな状況見られたら、確実に怒られる。


 だって、佐伯センパイ、亜希にベタ惚れみたいだし。


 なかなかわかりにくいとこあるけど。


「ちょっと、みーくん? 帰らないの?」


 右耳に髪の毛をかけながら言う亜希。


 何も言わない俺に少し苛立っているのか、語気が荒い。


 うん、怒った顔も可愛い。


 というより、これは拗ねてる顔だな。