「わたし、お祭りで食べるのはりんご飴が1番好き」

「あー、ぽいな」

「そう?」



ペリ、と袋から出して、心底嬉しそうに艶やかに光る飴を見つめる。



そして彼女の舌が、赤いそれをなぞる。

長いまつげ。伏し目がちになる瞳。

歯を立てる姿は、なんだか色っぽくて……直視出来ない。



いつもドジでピュアな夏目、なのに。

なんか、すごい、ドキドキする。



「そういえば、わたし、てっきり水谷くんは今日のお祭り藤原くんたちと回るんだと思ってた」



顔を上げた彼女はいつも通りで。

夏目には悪い気がしながらも、少しホッとする。



「そのはずだったんだけどなー。
今日、待ち合わせ場所に行ったら誰もいなかった」



えっと驚いた反応の後、声を失う。



「あれか、昨日まで3日間家を空けていた上に、スマホ壊れてたから連絡が届かなかったのか」



法事に行っていたのがここで仇となったかな。



あっちじゃ修理になんて出せなかったからどうしようもなかったけど、まさかこんな弊害が生じるなんて。

家に帰って来て、結構すぐにケータイショップに行ったけど、どうやら遅かったらしい。