彼は煙管に飽きたのか、タバコを取り出し口に含んだ気配がした。


「ああ、もぉ!」


まるで子供のようにイライラしながら艶やかな髪を掻きむしる。


すかさず私は彼のタバコの先に火をともした。


長年の習慣だ。何の意味も持たない。


そう思って居たが―――



『どうすればお前は―――』



の続きが聞きたくて、私の方も妙に落ち着かなくなってタバコを取り出した。


彼に点けたライターで火を灯そうとしても、カチッカチっとホイールの音が回るむなしい音しか鳴らず、火は一向につかない。


手の中に握ったライターを見つめ、自分の指先がわずかに震えていることに気づいた。





何なんだ、一体―――




自分に呆れながらもう一度ライターを着火しようとすると、


ぐいっ


彼が私の顔を挟み、顔を近づけてきた。


一瞬キスをされるのかと思い、ドキリとしたが



彼はご自分のタバコの先を私のタバコの先にくっつけて


タバコの火を移した。







もらい火。








彼がわずかに目を伏せると切れ長の瞳を縁取る長いまつげがわずかに伏せられる。


ああ、こんな何気ない仕草でも彼はとても美しく




私のタバコの先にともった炎の色よりも艶やかだ。