花火の大きな音にもかき消されないほど私にはしっかりとその音が聞こえた。


何てことない。


鼻緒が切れる音だった。



いや


鼻緒と一緒に私の中で―――何かが切れた。




私は真奈美が亡くなってから、一度も泣かなかった。


私を薄情だとか、真奈美をそんなに愛していなかったと噂をする者も居たが


そんなんじゃない。


消失感が大きすぎて―――それは空に咲きほこるあの大輪の華より大きく


私の中で悲しみとして処理できなかっただけなのだ。



だけど今―――


ようやく受け入れられた。




私の背後で一段と大きな音が上がり、見上げると滲んだ空の視界に紅色の目にも鮮やかな華が一輪咲いていた。


ああ



真奈美はこの世のどこにも居ない。


あの大輪の華のような艶やかな笑顔の彼女はもう見られない。





いや


違う。



望めば私は―――彼女と半分血を分けた同じ遺伝子を持つ


その人にその影を重ねることができる。






でも重ねてはいけなかった。


いや、最初から重ねてなどいなかった。










私は―――また大切な人を失おうとしている。