「彼女は、鬼麟です」
倖も、困惑を隠せないのか、苛立ちを抑えるときにやる癖、前髪をかきあげた。
修人はといえば、彼女の前のソファに座ったまま黙っている。
本当に、彼女はなっちゃんなのか。
でも、どこからどう見てもなっちゃんにしか見えない。
「……私は、鬼麟だけど棗じゃない。私は妃彩。棗の従姉妹」
危うい笑みで話す彼女に、背筋が寒くなる。
おかしい。
なっちゃんはこんなに怖かったっけ?
でも、名前が違うし従姉妹だって……。