「なんでそう可愛いことばかり言うんだよ、お前は」


昔は憎まれ口ばかりだったのに。


そう言いながら総司は、その形の良い唇であたしの口をふさぐ。


それはお互い様でしょう!


昔は「可愛い」なんて、口が裂けても言わなかったのに。


息が苦しくなって総司の襟元をつかむと、布団も敷いていない畳の上にそっと横にされた。


「……ごめん、我慢できねえ。
本当は、夫婦になってからするべきなのにな」


でも、と総司はあたしの首の傷跡に口づける。


「今のままじゃ、いつ誰に奪われるかわかんねえ……」


「誰も奪ったりしないよ!」


だって、隊の中でもめたら、切腹でしょ?


そうでなくても、総司にケンカ売る命知らずは、ここにはいないよ。


「心配しなくても、あたしだって浮気なんかしないから」


そう言うと、総司は顔を離して、ふっと笑った。


「……ほんと、俺は果報者だよ」


さらりと流れた黒髪が、あたしの鎖骨をくすぐる。
 

まだ蒸し暑い京の夜の空気が、ますます暑く薫っていく。


総司がそう思ってくれるなら、あたしも幸せだよ。


声を出さないように叱られながら、あたしはぎゅっと総司にしがみついた。