電車を乗り継いで2時間半の距離は、近いようでとても遠い。


 今までは体育館に行けば彼の姿を見ることができたけど、もうそこに行っても彼の姿を見ることはできない。


 それはすごく寂しい。


 付き合った瞬間に離ればなれになったのも悲しいけど。


 ……でも、私にはこれがあるから。


 ブレザーの胸ポケットに入った、第2ボタン。


 卒業式の日、体育館のギャラリーで佐伯先輩からもらった大事なもの。


 制服越しにそこに触れると、なんだか落ち着く。


 いつでも持ち歩いているんだ。


 そうすると、佐伯先輩の近くにいるって、そんな気がするから。


 会いたいときに会えないのは、不安にもなるけど。


 あの日、佐伯先輩に気持ちを伝えることができて、佐伯先輩からも『好き』だと言ってもらえて。


 だから、私は頑張ることができる。


 大学でも佐伯先輩はモテまくっているみたいだから、正直不安で不安でしょうがない。


 だけど、佐伯先輩は忙しいだろうにメールをしてくれたり、夜に電話をかけてきてくれたりと、いろんなことで私の不安をなくそうとしてくれている。


 それが嬉しくて、佐伯先輩の気持ちが伝わってくるみたいで、私はいつも励まされている。


 佐伯先輩の姿を学校で見ることがなくなっても、メールや電話でしか話せなくても、先輩を好きだという気持ちは全然色あせなくて。


 むしろ、どんどん先輩のことを好きになっていく。