初めてあいつを見た時、純粋に心からすごいと思った。


 俺はバスケが好きだし、ずっとバスケをやっていたからか、才能ある選手なんかにはすぐに目が行く。


 こいつが俺の1番の観察対象になったきっかけは、天才的なバスケの才能に惚れ込んでしまったから。


 でも、もうひとつだけ、俺がこいつを人一倍見るのには理由があった。


 それは、こいつが無表情を貫き通すから。


 試合をするとき、表情が出ないのは相手に行動を読み取られにくいから有利だ。


 だけど、佐伯はあまりにも表情が変わらなすぎる。


 唯一表情が変わるのは、シュートを決めた後の一瞬だけだ。


 佐伯がバスケを好きだということは、ボールを持つ姿を見ていればすぐにわかった。


 正直言って、うちのバスケ部の中でバスケが上手いといえるのは佐伯だけだろう。


 こいつがいるからなんとかチームが成り立っている、そんな状態だ。


 佐伯以外のヤツは、ただ突っ立っていれば佐伯から指示が飛ぶし、パスも回ってくる。


 言わば佐伯にまかせっきりだ。


 だから、俺はよく見ていた。


 佐伯の負担になり過ぎて、疲れてはいないか。


 楽しくバスケをやれているか。


 感情表現の苦手なこいつを、誰よりもよく見ていた。