「さっきの人達、知り合いとかじゃ……ないんだよね?」


 ベンチに凭れて足元あたりを見つめているヒサギちゃん──こと、櫻間ヒサギ(サクラマヒサギ)君は、ふい、と拗ねるようにそっぽを向いた。

 そんな仕草になぜか鼓動が高鳴る。

 入学式で初めてヒサギちゃんを見た時、凄く好みな顔の子がいるなって思ったんだ。

 すぐに男だって分かったからときめいたのは一瞬だったけど、それでも、どうしても可愛いと思ってしまう訳で。

 けど今はそんな感情に流されている場合じゃない。

 渦巻く気持ちを心の奥へと押しやって、俺はもう一度口を開く。


「いつもあんな事してるの?」

「…………」