「ううん、何でもないの!気にしないで?」


必死に誤魔化そうとする平井さんの隣りで、槙村さんは笑いを堪えるように肩を揺らしている。


「とにかく!並木さんが恵里奈さんのこと凄く心配してました」

「心配…?」

「はい。厳しいこと言ったりするのも、心配してるからこそだと思うんです。だから、また並木さんに会いに店に来て下さいね?」


学園祭で言われたことを思い出す。

あれは私を心配してくれてたから…

そう思うと、並木さんの優しさを強く感じる。

それと同時に、周りが見えなくなっていた自分が不甲斐なさ過ぎて、はっきりと「はい」とは言えなかった。


並木さんがどうしてここまで私を心配してくれるのかわからないけど。
このままの私じゃ、並木さんに顔向け出来ない。

もう迷うのはやめよう。

このままだと人の幸せを奪ってしまう。

誰かの不幸の上に成り立つ幸せなんて、あるはずがない。
そんなことあったらいけないんだ。