結婚生活を送っていた頃、旦那さんにはレストランどころか、どこへも連れて行ってもらえなかったらしい。

だからいろんな店に憧れがあったんだ。


俺はどこへでも連れて行ってあげたいと思った。
千秋さんが願うところならどこでも。


きっとこんなことは何気ないことかもしれない。
当たり前で、一瞬有り難く思われ消えて行くことなのかもしれない。
でも千秋はこんなことをしてくれる孝太郎の気持ちを心から喜んでいた。


気遣い、気遣われる生活から遠のいていた千秋には、孝太郎のやさしさが本当に心に沁みたんだ。



俺は、千秋さんが喜ぶことなら何でもしたい。
それは俺が千秋さんに対する想いだから。


「孝太郎くん、また行こうね。」


「えっ!?」


「今度は、大衆居酒屋。」


千秋さん・・・


「はい! 行きましょう!」


失敗だらけの初デートだったけど、
これはこれでよかったのかもしれない。


上っ面だけではない孝太郎の本気の想いが千秋に伝わったのだから。


好きな相手の気持ちを掴むのは、
『誠意と本気の想い』なのかもしれない。


孝太郎と千秋さんの時間は今、動き出した。