「 俺は 神坂弘樹 (かみざかひろき)
よろしくな!」

そう言ったこいつ。

なんかうるさいな…。

あんまり人とか変わりたくないのに…。

なんでこんなやつ。

むくれていると、さすがにこいつも気づいたのか顔を覗き込んで来る。

「どーした?具合悪い?」

あっ、こいつ鈍感か。

イケメンのくせに、人がむくれてるの見て、“具合悪い?”って。

そう思うとほんの少しだけ久しぶりに笑えた。

「おっ!やっと笑ってくれた!!」

私のそんな姿を見て、本当に嬉しそうにする神坂。

「神坂ってバカなんだ。」

「いきなり呼び捨てかよ。ってバカってなんだ!バカって!!」

「いや、なんか残念な人だなと…。」

「えっ?何??哀れまれてんの俺?」

「いや、顔そこそこでそれはちょっと…」

「ちょっ…へこむわー…。」

「じゃ、私は寝るから。帰っていいよ。」

「え?いや、それは…。」

「てか、帰って。」

私のテリトリーに入ってくんな。

じと。

睨みつけるように神坂をみる。

少し仰け反ると、「わかった…降参…。」

そう言って、両手を挙げて帰ろうとした。

なんだ、案外簡単じゃんかこいつ。

そう思って安心したのもつかの間。

「じゃ、また明日な愛ちゃん♪」

そう言ってキラースマイルを決めて出て行った。

『また明日』って…。

「にっ2度と来んなー!」

私の悲痛な叫びは病室に響いた。