皐月さんの家に向かうまでの車のなか…俺は、ずっとうつむいて黙っていた。

「お前、静かなのな。やるときはあんなにベラベラ猿みたいにわめいてたくせに。」

わめいてたんじゃなくて、自分の緊張を解くために、声を出し続けてたかったんです!!
…と言いたかったけど、話し方が冷たい声だったから、 うなずくだけにした。

そんな俺に皐月さんは手を伸ばして頭をグシャグシャと撫でた。

10分ほど走っただろうか…。アパートの前に車は止まった。

「ついたぞ…。降りて荷物を運べ。」
「…はい。」

カードキーで開いた重そうなドアの向こうには、物の少ない整頓された部屋が広がっていた。

「荷物は…そうだな、ここに置け。」
思ったより広い部屋で、俺はもっとドキドキしていた。

皐月さんは、俺の震えっぱなしの手をとった。
「何で、こんなに震えてんだ?」
「へ?あ、あの。」

皐月さんは俺の手を口元に近づけた…と思ったら、薬指の根元を噛んだ。
「っ!!」
「少しは落ち着いたか?」

俺を見下ろす目は…何かを見透かされそうで、思わず顔をそらしてしまった…。
「まだ落ち着かないのか…。だったら…!!」

皐月さんは俺の腰に片手を回すと、もう片方の手で、首筋をなぞった。
ゾクッ
あれ…何これ…。初めての感覚に身動ぐと、また皐月さんはフッと笑みを浮かべた。

「やっと…いつもの調子に戻ったな。」
「なっ!」
「安心しろ。今日は、手を出さない。先にシャワーを浴びてこい。」

何なんだよ…。俺の緊張してたの…気がつかれてたのかな…。
しぶしぶ浴室に向かう俺には、聞こえていなかった。
「反則だろ…今の反応。」
皐月さんがそう呟いたことは。