うん、ハルさんの言う通り。
並木さんは本当に良い人だと思う。

意地悪で口悪いけど、優しいし。
大人で色気むんむんだし。

バイクのことは全くわからないけど、大きくてかっこいいのに乗ってんだろうなぁ。



「ーーって、これ自転車ですよね?」

「そうだけど?」

「そうだけどって…バイクじゃないんですか⁉︎」

「あ?バイクなんて一言も言ってない」


た、確かに。
バイクなんて言ってないけど…
私がただ勝手に思い込んだだけだけど…

鍵をくるってかっこ良く回してたら、それがまさか自転車の鍵だったなんて思わないもん!


「乗るの?乗らないの?」


荷台をポンポンっと叩く並木さん。


「〜〜っ!乗ります、乗らせて頂きます!」

「ふっ、面白い奴」


並木さんは自分の着ていたパーカーを脱ぐと、私が座っても痛くないように適当に畳んで荷台に敷いてくれた。

それは何も言わず、スマートで。

この人は、ドキッとしちゃうようなことを簡単にやってのけてしまうんだ。


横向きに荷台に乗り、並木さんのお腹に手を回す。

途端に感じる並木さんの温もりと珈琲の残り香。


私が好きなのは先輩のはずなのに…

どうしてだろう。
家に着くまで、心臓は鳴り止んでくれなかった。