「ハァ....」




文も駄目ならどうすればいいのだろうか、以前土方さん以外の幹部の方に頼んでみたが全て断られた。




「もういっそのこと鳩でも飛ばそうか」と訳のわからないことまで考えていれば、門の近くからもめるような声が聞こえてきた。




「――ほんの少しだけでいいんです!」




「しつこいぞ爺さん!」




聞き覚えのある声、今一番会いたかった人の声、私は駆け出していた。




「ここに居る筈なんだ、頼むから....!」




「そんな女は知らん!帰れ!」




建物の陰に隠れて覗きみれば、
そこにはやはり甘味処の主人がいた。

何時から門番に食ってかかっていたのだろうか、汗だくで声も枯れている。




「しゅ、」

「動くな」




声をかけようと手を伸ばしたところで誰かに口を塞がれた。




暴れることなく大人しくしていればひんやりと冷たい手が離れる。
振り向けばそこには斎藤さんが苦虫をかみつぶした様な顔で立っていた。




「会って話をするだけです、止めないでください」




「ならん、土方さんから接触させるなと言われている」




――また、命令。
呆れて物が言えない。




「主人の様子を見れば、今日が初めて来たというわけではない事くらい分かります」




「だからなんだ」




「体を壊したらどうするんですか!誰が看病するんですか!斎藤さんがしてくださるんですか?!」




「....そう睨むな、別に俺は永遠に接触させないとは言っていない」




斎藤さんの言葉に私は首を傾げる。
どういうことなのかと問えば、「機会を設けてある」と教えてくれた。