ケータイ小説 野いちご

てのひらの温度


季節はもう初夏を迎えようとしていて、日に日に気温が上がってゆくのが肌でわかる。若々しかった木々の緑もすっかり濃くなり、原色の景色が訪れる。

そのとき、アナウンスが流れ、終わるやいなや、クリーム色の車体に赤の線が入った電車が下りのホームに滑り込んできた。


噴き出すような音と共にドアが開く。珍しく、二人ずつ向かい合って座るボックス席タイプだ。車内全体を見回し、素早く座る場所を見極める。日差しの挿さない側を選んで、かつ一人の人のところがいい。

わずか数秒の思考の結果、私は大きなエナメルのスポーツバックを脇に置いて眠りこけている少年の斜め前に腰を降ろした。

この咄嗟の判断は、電車通学を始めた高校生からなので、慣れている。


通路側に座って荷物を左のシートに置いたところで、鉄の塊はゆっくり走り出した。

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