なんとなくぼんやりと一日を過ごした。


学校でも
先生の話も友達の話も
全く頭に入ってこなかった。


誰かを好きになるって
こんなに辛いことなんだ。


あんなふうに
乱暴な蒼介さんを知りたくなかった。


あんなふうに、
他の女の子を抱きかかえている
蒼介さんの姿は見たくなかった。



もう、好きな人なんて、
一生出来なくてもいい。


友達とお兄ちゃんがいれば
これまでもしあわせだった。


蒼介さんは本当はどんな人なんだろう。


どの蒼介さんが
本当の蒼介さんなんだろう。


こんなことがあっても
まだ蒼介さんのことを
嫌いになれない自分が情けなかった。


「あんなやつ、やめとけっ!」って、
お兄ちゃんが言ってくれたら
忘れられるかな…。

あきらめられるかな…。


そう思って、夜遅くまで
お兄ちゃんを待っていたけれど



その夜、

お兄ちゃんは

帰ってこなかった。