局長の言葉に、あたしはうなずくしかなかった。


去年の秋、あたしは江戸城の大奥から、将軍の側室候補という地位を捨て、脱走した。


京の都で力尽きたあたしを拾ったのが、隣にいる沖田総司。


そして、彼が所属している会津肥後守御預、新撰組。


元くの一という経歴を買われ、監察方隊士として雇われることになったあたしは、芹沢派粛清や、池田屋事変にまで関わることとなる。


恋というものを知らなかったあたしは、いつの間にか総司に惹かれていて……思いが通じ合ったのは冬のことだった。


今まで大奥からの追っ手が来たり、実は人狼である総司の身体が悪くなったりと色々あったけど……。


池田屋事変であたしの血を飲んだ総司は体調が落ち着いているし、やっと心も体もひとつになれた。


新撰組も順風満帆……のはずなんだけど、これがいつまで続くことやら。


「あの近藤先生、実は大事な話が」


やっと顔を上げた総司が、真摯な目で局長を見つめる。


大事な話?
なんのことだろう。


「あの……」

「失礼します、局長!」


ふすまの向こうからの切羽詰まった声に、総司の話は中断されてしまった。