予想だにしなかった言葉が耳に届いて、えっ、と顔を上げた。

並木さんは橘君の元へ戻って行く。
私の横を通り過ぎる時、ぽんっと優しく頭に手を置いて。


何…今の……慰めてくれたの?
乱暴な言葉遣いとは裏腹に、優し過ぎる手の温もりに戸惑ってしまう。

てっきり何か言われると思ってたのに。


後ろを振り返ると、並木さんは橘君と楽しそうに談笑していた。

その無邪気な笑顔に、また胸が高鳴る。


「全くつかめない人…」


口が悪くて、ほぼ初対面の私にアホって言うぐらいだから、もっと嫌な人なのかと思ったのに。

思ってたほど、嫌な人じゃないのかもしれない。



「望月、もうHR始まるぞ。教室入りなさい」


いつの間にかすぐ後ろにいた先生に、ファイルで頭をパコッと軽く叩かれてハッと我に返った。

並木さんを見つめていた自分に気付く。


何でこんなに胸がうるさいんだろう…

頭に浮かぶ想いを振り切るように頭をぶんぶんと振る。

別に並木さんが気になって見てたわけじゃないんだから。


そうしっかりと自分に言い聞かせると、急いで教室に戻った。