そう言いかけた言葉をつぐんだ。


レジ台の横に置いてある人形の輪郭に目が奪われる。


スッと通った鼻筋に大きな目、細すぎない顎。


あたしの理想像が今目の前に現れた。


そんなビリビリとしびれるような感覚がする。


と同時に、危険信号を知らせる胸のモヤを感知する能力が衰えた。


「これ……」


あたしはその輪郭が入っている透明ケースに手を伸ばす。


腕の入っているケースでさえ触れることができなかったのに、あたしは一体どうしたのだろう。


混乱しながらもその輪郭を食い入るように見つめる。


この目に黒目がちな切れない瞳を入れてあげたい。


髪はココア色の少し外羽をしている癖毛。


笑ったときにえくぼ。


自分の理想をどんどんその輪郭へあてはめていく。


「それが陽子の好きなタイプかぁ。あたしはこっちかなぁ」


実紗が楽しそうに商品を見ていく。


あたしもいつしかそれに流され、長時間店内にとどまっていたのだった。